SARAVAH


Pierre Barouhが国境を越えて自由に刻みつづけていた轍を、「SARAVAH50周年展」の会場美術の仕事を通して辿ったばかりでした。その道中にあったのは、芸術という言葉で大まかにくくってしまうのがもったいないようなものばかりだった。どこか傾いていて、はみでていて、きれいすぎなくて、熱気を帯びていて、信じるちからが強くて、でも肩透かし食らうくらいにするりと避けるみたいで、ユーモアたっぷりで。表現と音楽と詩と人が巡りあって生まれるものが敷き詰められていて、そういったものをぜんぶ孕んだ花粉が、ピエールさんの歩んだあとにたくさん舞っていました。その一粒は確実に自分につき、種となってしっかり根をはやしています。
ピエールさんの眼のなかには広大な空があったし、大きく静かにうねる夜の波に引き込まれるようだったし、口の両端をきりっとあげて笑う顔は皆を虜にした。
ピエールさんが撒いた花粉が今夜もこれからもいろんなところで芽吹きます。

2016.12.28
RIP
SARAVAH